RCEPとは?


 


 RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、20135月から交渉が始まりました。参加国は、ASEAN10か国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの計16カ国です。

 RECPの交渉分野には、農産物の関税の削減や、工業品の関税削減など、従来の貿易交渉の主な分野が含まれています。またそれだけでなく、「サービス貿易」(保険、医療、観光、教育、水道サービスなど)や、医薬品特許や著作権などを含む「知的財産権」、公共事業などにかかわる「政府調達」など、私たちの暮らしに密接にかかわる分野も含まれているといわれます。

 ところが、RCEPTPPと同じく、交渉内容は完全に「秘密」です。参加国の市民団体等はネットワークをつくり、リークされた文書などを共有したり、メーリングリストなどを通じて日々情報交換をしていますが、限られた情報の中で交渉内容を分析し問題提起をしていくことは極めて困難です。
そんな中、リーク文書から明らかになったことで私たちが強く懸念しているのは、「知的財産権」に関わる条項です。リーク文書によれば、この分野の医薬品特許の問題で、日本と韓国がTPPと同じ水準の強い特許権保護を主張しているとされています。もしこうした提案が実現してしまえば、企業が持つ薬の特許期間が延長され、安価なジェネリック医薬品の製造は困難となります。その結果、アジアの貧困国でエイズやマラリア、その他の感染症などに苦しむ人々の治療はこれまで以上に困難になってしまいます。RCEPに参加する国々の中で、ベトナムやマレーシア、ラオス、カンボジアなど貧困層も多い国々の市民からは、「日本の提案を撤回してほしい」という強い懸念も表明されています。国際的に活動する「国境なき医師団」も、TPPだけでなくRECPにおいても製薬大企業の利益が優先されることへの警告を発信しています。
 
 またRCEPにはラオス、カンボジア、ミャンマーなどの後発開発途上国(LDC)が含まれています。こうした国ぐにとっては、RCEPによって国内産業がただちに民営化されたり、大幅な規制緩和が行なわれれば、貧困解決どころか、国内の格差はますます広がっていくと思われます。まさに貿易が人々の命や暮らし、人権に有害な結果をもたらすことになりかねません。
 
 これまでRCEPに参加する国の市民社会は、交渉参加国政府に要請文を提出するなどして、人々の声を交渉に反映させようとしてきました。しかし秘密交渉の壁も厚くこうした声はなかなか汲み取ってもらえないのが現状です。交渉も長期化し、2017年には妥結という目標が立てられる中で、日本における2月の第17回交渉会合は非常に重要なポイントとなっています。「貿易と人権・環境・貧困削減」という対立的な課題をどのように調和させ、未来の貿易のあり方を提言していけるのか、RCEPの問題点は何なのか、日本の市民社会が果たすべき役割は大きいと言えます。

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